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FBA baseball column
vol.4 < > vol.6 vol.5 「球春再スタート」
2011/4/5 美山和也

プロ野球がいよいよ始動する。キャンプも終了し、オープン戦も「ペナントレース本番」を見据えた選手起用が始まったが、心機一転の再スタートを切った選手も少なくない。新人選手、トレード移籍した選手もそうだが、今回は『解雇通告』を受け、地獄から這い上がった2人の選手に注目したい。12球団合同トライアウトを受験し、北海道日本ハムファイターズに拾われた松坂健太外野手(25=前埼玉西武ライオンズ)と、育成枠で読売巨人軍と契約した土井健大捕手(21=前オリックス)である。

松坂は走攻守三拍子揃った逸材として注目されていたが、チームの環境に適応できなかったという。

「やっぱり、野球を続けたい。西武で現役を続けるのがベストだったけど、もうそれは叶いません。今は新しいチームと契約することしか考えていません。いい意味で、『西武をやっつけてやる、後悔させてやる』と…」

昨年11月10日、トライアウト後の囲み会見でそう語っていた。トライアウト直前まで、松坂は「行方不明」とも報じられていた。そのことをぶつけてみると、解雇通告を受けた直後は頭のなかが真っ白になり、何も考えられてかったそうだ。「行方不明」は大阪の実家に一時帰郷したことによる“誤報”だったが、気持ちを整理するに従い、「野球を続けたい」との結論に至った。

トライアウト当日、松坂は本塁打も放っており、西武時代のモヤモヤも完全に吹っ切れたのではないだろうか。

新しいチームとの契約を勝ち取る…。前進することしか考えない選手は強い。

また、トライアウトは受験していないが、土井捕手の転機には感慨深いものがあった。今季から巨人二軍監督に転向する川相昌弘氏がフロントに推薦して、獲得が決まった選手なのである。

「元気がある。一生懸命やっている。ガッツもあるし…」

筆者がファーム戦を観戦した限りだが、土井選手は選手登録こそ捕手だったが、指名打者や一塁手で出場することも多かった。

特筆したいのは「元気」「一生懸命」といった点が評価されたことである。もちろん、バッターとして評価すべきところもあったのだろうが、「元気」は特別な才能ではない。『気構え』、つまり、野球に取り組む姿勢が買われてのチャンス到来となった。チーム関係者に聞けば、川相・二軍監督とはファーム戦ですれ違う程度しか接点がなかったという。

一生懸命やっていれば、誰かが見ている――。

土井捕手の昨季の成績(二軍)は90試合(チーム最多)に出場し、打率2割5分5厘。打点31、本塁打4(チーム最多)。育成枠からの再スタートとなるが、今季の巨人は、大道典嘉選手の引退で『右の代打』に“欠員”が生じている。土井捕手にエールを送りたい。そして、素質や才能ではなく、「元気」と「取り組む姿勢」で再出発を勝ち取ったことは、野球少年の心にも響くはずだ。

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美山和也  1967年千葉県出身。
大学在学中からプロ野球、五輪スポーツの取材・執筆活動に入る。週刊大衆、週刊女性を経てフリーに。専属記者時代は二子山部屋を担当した。
近著は『マツイの育て方』(バジリコ出版)、『戦力外通告』、『同 諦めない男編』(角川ザテレビジョン/共著)、『プロ野球 最後の真実』(桃園書房)、『プロ野球 戦力外通告』(洋泉社新書/共著)、『猛虎遺伝子』(双葉社/共著)など。

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